2024年度より3年間で精神分析の基礎理論、その技法を概観することを目的として、『精神分析臨床セミナー:基礎理論を学ぶ』を開講しました。本年度は改めて『精神分析臨床セミナー:基礎理論を学ぶ』(Ⅱ-ⅰ)を開講します。
まず、初年度である本年度は、フロイトが創案した精神分析の初期の業績から、大枠その直系の精神分析に関して論じます。初回は精神分析を学ぶ意義などその歴史や学び方について、精神分析の全貌の見取り図を講義します。精神分析は21世紀になり、生物学的精神医学に圧倒されている傾向にありますが、いまだに大きな意義があることを再確認できるでしょう。2、3回目はフロイトの人生、その理論、症例に関する講義です。ここでは精神分析の根幹となるフロイトに関する基本的な知識と症例を学ぶことができます。また、当時の女性分析家の活躍も重要なことです。4回目はクラインの最初の分析家であるフェレンツィの人生と理論を学びます。フェレンツィはフロイトに造反して、母子関係、トラウマに関して論じた先駆的な人です。これに続いて、クラインの前半の人生と子どもの精神分析に関して論じます。5回目は、クラインの後半の人生と成人の精神分析に関してPSポジション、Dポジションなど重要な理論展開について論じます。また、クラインの後継者であるビオンの基礎を学びます。6回目はアンナ・フロイトと、その後の自我心理学の基礎とカーンバーグに関する理論を学びます。
2年目以後は、エリクソンから始まる発達論を論じます。それに次いで、フェアバーンから始まる対象関係論、ウィニコット、ビオンの理論の詳細、スィガールやシュタイナーなどの現代クライン派、タスティンやアルヴァレツなどの自閉スペクトラム症や被虐待児の子どもの精神分析理論について論じます。また、自我心理学と異なるサリヴァンからの系譜である人間関係論など米国で展開されている精神分析理論についても論じる予定です。
3年間で精神分析の理論を総括的に理解して頂くことを目的としていますので、是非とも多くの聴衆を期待しています。
会場は市ヶ谷TKPですが、Zoomのみでも参加可能です。Zoomでのご参加でも、その講義の臨場感をお伝えできるように尽力していますので、ご安心ください。
共催:こども・思春期精神分析研究会/こども・思春期メンタルクリニック 木部則雄
本セミナーは、臨床心理士資格の更新に必要なポイント申請を行っています。また、日本精神分析学会の認定研修グループに認定されています。
※セミナーに4回以上参加された参加者に修了証明書を発行いたします。
日程 | 講義1(10時〜12時) | 講義2(13時〜15時) | 講義3(15時15分〜17時15分) |
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第1回 4月14日 | 精神分析を学ぶ意義 講師:木部則雄 | 精神分析の歴史・概観 講師:福本修 | 精神分析の学び方・活かし方 講師:岩倉拓 |
第2回 6月16日 | フロイトの人生と業績:前半 (第一次世界大戦前まで) 講師:福本修 司会:木部則雄 | フロイトの症例① 講師:木部則雄 | アブラハムの人生と業績 講師:福本修 |
第3回 8月18日 | フロイトの人生と業績:後半 (第二次世界大戦前まで) 講師:福本修 司会:木部則雄 | フロイトの症例② 講師:平島奈津子 | 女性の精神分析家 講師:平島奈津子 |
第4回 10月13日 | フェレンツィの人生と業績 講師:田中健夫 | クラインの人生と業績:前半 (1930年代半ばまで) 講師:木部則雄 司会:田中健夫 | クラインの子どもの理論と症例 講師:木部則雄 |
第5回 12月8日 | クラインの人生と業績:後半 (主に第二次世界大戦後) 講師:皆川英明 司会:福本修 | クラインの大人の理論と症例 講師:皆川英明 | ビオンの人生と業績 講師:福本修 |
第6回 2月16日 | A.フロイトの人生と業績 講師:関谷秀子 | 自我心理学の基礎 講師:権成鉉 | 自我心理学の発展 (カーンバーグなど) 講師:権成鉉 司会:木部則雄 |
岩倉 拓 (あざみ野心理オフィス主宰/聖マリアンナ医科大学非常勤講師)
▷ 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士
▷ 経歴:横浜国立大大学院教育学研究科修士課程修了。電話相談員、精神神経科クリニック、スクールカウンセラー、大学病院心理士、保健所・乳児院コンサルタント等を経て、2007年にあざみ野心理オフィスを開設。
▷ 主な著書・論文:『精神分析的サポーティブセラピー(POST)入門』(分担執筆、金剛出版)、『スタートライン臨床心理学』(分担執筆、弘文堂)、『子どもの心理臨床 関係性を育む』(分担執筆、建帛社)、『パーソナリティ障害の精神分析的アプローチ』(分担執筆、金剛出版)、『心理臨床家の成長』(分担執筆、金剛出版)、『事例で学ぶアセスメントとマネジメント―こころを考える臨床実践―』(分担執筆、岩崎学術出版)、『その心理臨床、大丈夫? 心理臨床実践のポイント』(分担執筆、日本評論社)など。
木部 則雄 (白百合女子大学文学部教授/こども・思春期メンタルクリニック)
▷ 資格:精神科指定医、精神科専門医、臨床心理士
▷ 経歴:京都府立医科大学卒業。聖路加国際病院小児科、三枚橋病院の勤務後にタヴィストッククリニック児童家庭部門に留学。帰国後、NTT東日本健康管理センター勤務後に、2001年白百合女子大学発達心理学専攻、2014年こども・思春期メンタルクリニックの開設に至る。
▷ 主な著書・論文:『こどもの精神分析‐クライン派・対象関係論からのアプローチ-』(岩崎学術出版社)、『こどもの精神分析Ⅱ‐クライン派による現代のこどもへのアプローチ-』(岩崎学術出版社)、『こころの発達と精神分析‐現代藝術・社会を読み解く-』(金剛出版)、『基礎講義 アタッチメント』(企画・監修、岩崎学術出版社)、『クラインとウィニコット-臨床パラダイムの比較と対話‐』(監訳、岩崎学術出版社)など。
権 成鉉 (クリニックソフィア院長)
▷ 資格:精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本精神分析学会認定精神療法医・認定スーパーバイザー(指導医)、日本集団精神療法学会認定医、国際精神分析協会 正会員(認定精神分析家)
▷ 経歴:川崎医科大学卒業後、同精神科入局。同精神科助教授、付属病院医長、2000年同上退職。同年にクリニックソフィアを開院。1983年~1989年に東海大学精神科研修生、1989年~1991年にメニンガークリニックにインターナショナル・フェローとして留学。
▷ 主な著書・論文:『第四の耳で聴く』(監訳、木立の文庫)、『精神療法と薬物治療』(監訳、岩崎学術出版社)、『摂食障害』(分担執筆、岩崎学術出版社)、『神経症とその周辺』(分担執筆、星和書店)、『精神療法マニュアル』(分担執筆、金剛出版)、『精神分析辞典』(分担執筆、岩崎学術出版社)、『心身医学用語辞典』(分担執筆、三輪書店)、『力動的集団精神療法』(分担執筆、金剛出版)、『精神分析と文化』(分担執筆、岩崎学術出版社)、『精神力動的精神医学』(監訳、岩崎学術出版社)。
関谷 秀子 (法政大学現代福祉学部教授/初台クリニック)
▷ 資格:精神保健指定医、臨床心理士、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本児童青年精神医学会認定医、日本精神分析学会認定精神療法医スーパーバイザー
▷ 経歴:東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大医学部学精神神経科学教室入局。横浜市立市民病院、碧水会長谷川病院を経て関東中央病院精神科勤務。前関東中央病院精神科部長。
▷ 主な著書・論文:『思春期に心が折れた時親がすべきこと』(中公新書ラクレ)。
田中 健夫 (東京女子大学現代教養学部教授/吉祥寺サイコセラピーオフィス)
▷ 資格:臨床心理士、精神分析学会認定心理療法士・スーパーバイザー
▷ 経歴:東北大学文学部卒業後、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程中退。九州大学学生生活・修学相談室、山梨英和大学を経て現職。1999年から1年間、タヴィストック・クリニック思春期・青年期部門にプログラム・アソシエイトとして留学。
▷ 主な著書・論文:『精神分析とユング心理学:心の深層へのアプローチ』(共著、放送大学教育振興会)、『子育て、保育、心のケアにいきる赤ちゃん観察』(分担執筆、金剛出版)、『学生の主体性を育む学生相談から切り拓く大学教育実践』(共編者、学苑社)、『トラウマを理解する:対象関係論に基づく臨床アプローチ』(共訳、岩崎学術出版社)、『乳幼児観察入門:早期母子関係の世界』(共訳、創元社)など。
平島 奈津子(オフィス 朔)
▷ 資格:精神保健指定医、公認心理師、医学博士、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本精神分析学会認定精神療法医・スーパーバイザー、日本サイコオンコロジー学会認定登録精神腫瘍医、日本女性心身医学会認定医、日本医師会認定産業医
▷ 経歴:東京医科大学卒業。慶應義塾大学精神・神経科学教室で初期研修を受け、同教室助手、昭和大学医学部精神医学教室助(准)教授を経て、2013年から国際医療福祉大学三田病院精神科病院教授。2020年から現職。2024年3月末に現職を退職し、4月から精神療法専門の「オフィス 朔」を開業予定。
▷ 主な著書・論文:『<効果的な>精神科面接 力動的に診るということ』(単著、金剛出版)、『不安のありか~‘私’を理解するための精神分析のエッセンス』(単著、日本評論社)、『四天王寺カウンセリング講座10』(分担執筆、創元社)、『治療者のための女性のうつ病ガイドブック』(編集・分担執筆、金剛出版)など。
福本 修 (代官山心理・分析オフィス/恵泉女学園大学名誉教授)
▷ 資格:精神科専門医、日本精神分析学会認定精神療法医・スーパーバイザー、国際精神分析協会正会員・日本精神分析協会訓練分析家
▷ 経歴:東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部付属病院分院、静岡大学保健管理センター助教授を経て、タヴィストック・クリニック留学、同成人精神分析的精神療法課程修了。2000年から恵泉女学園大学人文学部教授。
▷ 主な著書・論文:『精神分析/精神科・小児科臨床セミナー総論』(共著、福村出版)、『連続講義 精神分析家の生涯と理論』(共著、岩崎学術出版社)、『精神分析の現場へ──フロイト・クライン・ビオンにおける対象と自己の経験』(誠信書房)、『現代クライン派精神分析の臨床──その基礎と展開の探究』(金剛出版)、『現代フロイト読本』(共著、みすず書房)、『精神分析的心理療法におけるコンサルテーション面接』(監訳、金剛出版)、『クライン派用語事典』(監訳、誠信書房)、『フロイトを読む──年代順に紐解くフロイト著作』(監訳、岩崎学術出版社)、『現代クライン派入門―基本概念の臨床的理解』(共監訳、岩崎学術出版社)、『現代クライン派の展開』(誠信書房)、『クリニカル・クライン』(共訳、誠信書房)ほか。
皆川 英明 (紙屋町こころのクリニック院長)
▷ 資格:精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、国際精神分析協会正会員、日本精神分析学会認定スーパーバイザー、産業医
▷ 経歴:広島大学医学部卒業後、広島大学大学院修了。広島大学病院、国立病院機構呉医療センターの勤務後に、タヴィストック・クリニック成人部門に留学。帰国後、草津病院を経て、2014年〜2022年11月まで広島市精神保健福祉センター所長。2022年12月から現職。
▷ 主な著書・論文:『「夢を報告すること」の機能について-病理的対象関係の再演に関する一考察-』(精神分析研究)、『パーソナリティ障害と夢–夢の報告と喪の試みとしての舞台化−』(精神分析研究)、『現在と過去–羨望に満ちた病理的対象関係の再演とその解釈をめぐって−』(精神分析研究)、『クライン派用語事典』(分担翻訳、誠信書房)など。
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