日本において「ひきこもり」が社会的問題として注目されるようになり久しく、多様な取り組みがなされています。「ひきこもり」には「生物-心理-社会」的な様々な要因が複雑に絡み合っています。また、何らかの精神疾患が併存している場合も多く、長期化・高年齢化の問題もあります。児童期・思春期においては「不登校」の問題とも関連してきます。
一方で、「ひきこもり」は社会現象或いは症状としての「ひきこもり」だけではありません。本セミナーでは、こうした「ひきこもり」だけでなく、普通の社会生活を営んでいても、現実との接点がない人たちの心性についても焦点を当てます。例えば、自閉スペクトラム症(ASD)を抱える人たちもそうでしょう。更に言えば、芸術家は自らの世界にひきこもり、作品制作に没頭し、完成させます。「ひきこもり」をこうした広い視野でとらえるならば、「孤高」とも「孤独」とも言える状態も含んでいます。これは広く言えば、自己愛というテーマに集約されるかもしれません。
このような「ひきこもり」心性について、精神分析的な観点からはどのように理解することができるでしょうか。また、精神分析アプローチはこの問題にいかに貢献できるでしょうか。2025年度は、ポスト・クライン派の理解に加え、ユング派の田中康裕先生、精神病理学の内海健先生をお迎えし、多様な観点から議論を行います。
今回も、会場参加とZoom参加のハイブリット開催をいたします。これまで参加できなかった関東以外の臨床家の方々のご参加も歓迎いたします。
主催:こども・思春期精神分析研究会 木部 則雄
本セミナーは、臨床心理士資格の更新に必要なポイント申請を行っています。
※セミナーに4回以上参加された参加者に修了証明書を発行いたします。
◆グループ・スーパーヴィジョン ※グループ・スーパーヴィジョンはオンラインでは行いません。
セミナー開催日の午前中(9時30分〜12時)にグループ・スーパーヴィジョン(定員12名)を行っています。
*参加資格:午後に行われる「子ども・思春期精神分析セミナー」の参加者
事例を提示でき、こどもの精神分析的心理療法の技術を身につけたい方
※提示するケースは精神分析的心理療法を実践したケースでなくても構いません。
*スーパーヴァイザー:
木部則雄(白百合女子大学人間総合学部発達心理学科/こども・思春期メンタルクリニック)
吉沢伸一(ファミリーメンタルクリニックまつたに)
*場所: こども・思春期メンタルクリニック(セミナー会場近く)
*参加費: 33,000円(消費税を含む)
お申し込みの際に「お問い合わせ」欄に参加希望の旨をご記入ください。
※午前のグループ・スーパーヴィジョンに参加を希望され、午後はZOOMでの参加を希望される場合は、間の時間が1時間しかありませんのでご注意ください。
日程 | 講師 | 司会 | 事例提示 | |
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第1回 | 5月11日 | 木部 則雄 | 吉沢 伸一 | 藤原 麻由 |
第2回 | 7月13日 | 田中 康裕 | 木部 則雄 | 斎藤真樹子 |
第3回 | 9月14日 | 内海 健 | 木部 則雄 | 福島 渉 |
第4回 | 11月9日 | 高野 晶 | 木部 則雄 | 小川 基 |
第5回 | 1月11日 | 飛谷 渉 | 木部 則雄 | 石川 絵理 |
第6回 | 3月8日 | 平井 正三 | 木部 則雄 | 小笠原貴史 |
内海 健 (東京藝術大学名誉教授・東京大学精神神経科客員研究員)
木部 則雄 (白百合女子大学人間総合学部発達心理学科/こども・思春期メンタルクリニック)
高野 晶 (北参道こころの診療所)
田中 康裕 (京都大学教育学研究科教育学環専攻臨床心理学講座)
飛谷 渉 (大阪教育大学保健センター)
平井 正三 (御池心理療法センター/認定NPO法人子どもの心理療法支援会)
小笠原貴史 (小笠原こどもとかぞくのカウンセリングルーム)
小川 基 (相州病院)
石川 絵理 (クリニックおぐら)
斎藤真樹子 (愛育クリニック)
福島 渉 (西新宿臨床心理オフィス)
藤原 麻由 (日本航空/東京大学附属病院)
第1回
▷ 「青年期のデプレッションへの短期精神分析療法―CBTとの比較実証研究と実践マニュアル」(2022)木部則雄監訳,岩崎学術出版社.
▷ 「こころの発達と精神分析-現代藝術・社会を読み解く」(2019)木部則雄著,金剛出版.
▷ 「精神分析/精神科・小児科臨床セミナー総論:精神分析的アセスメントとプロセス」(2019)木部則雄編,福村出版.
▷ 「こどもの精神分析Ⅰ・Ⅱ」(2007・2012)木部則雄著,岩崎学術出版社.
第2回
▷ 「心理療法において何が癒やすのか?」(2024)ヴォルフガング・ギーゲリッヒ著,田中康裕訳,創元社.
▷ 「魂の論理的生命: 心理学の厳密な概念に向けて」(2018)ヴォルフガング・ギーゲリッヒ著,田中康裕訳,創元社.
▷ 「心理療法の未来:その自己展開と終焉について」(2017)田中康裕著,創元社.
▷ 「発達の非定型化と心理療法」(2016)河合俊雄・田中康裕編著,創元社.
第3回
▷ 「気分障害のハード・コア―「うつ」と「マニー」のゆくえ」(2020)内海健著,金剛出版.
▷ 「金閣を焼かなければならぬ」(2020)内海健著,創元社.
▷ 「自閉症スペクトラムの精神病理: 星をつぐ人たちのために」(2015)内海健著,医学書院.
▷ 「さまよえる自己―ポストモダンの精神病理」(2012)内海健著,社筑摩書房.
第4回
▷ 「週1回精神分析的サイコセラピー 実践から考える」(2024) 髙野晶・山崎孝明編著,遠見書房.
▷ 「精神分析/精神科・小児科臨床セミナー総論」(2019) 木部則雄編著,福村出版.
▷ 「週1回サイコセラピー序説-精神分析からの贈り物」(2017) 北山修監修・髙野晶編著,創元社.
▷ 「精神分析から見た成人の自閉スペクトラム」(2016) 福本修・平井正三編著,誠信書房.
第5回
▷ 「アノレクシアの心ー拒食症の白い闇、精神分析の灯火」(2024) マリリン・ロレンス著,北岡征毅訳・飛谷渉解題,金剛出版.
▷ 「エディプス・マターズ―現代クライン派臨床理論から考える心のインフラ」(2021) In,思想8月号 飛谷渉著,岩波書店.
▷ 「精神分析たとえ話: タヴィストック・メモワール」(2016)飛谷渉著,誠信書房.
▷ 「新釈メラニークライン」(2014)ミーラ・リカーマン著,飛谷渉訳,岩崎学術出版社.
第6回
▷ 「精神分析とトラウマ―クライエントとともに生きる心理療法」(刊行予定)平井正三・櫻井鼓共編,金剛出版.
▷ 「意識性の臨床科学としての精神分析―ポスト・クライン派の視座」(2020)平井正三著,金剛出版.
▷ 「児童養護施設の子どもへの精神分析的心理療法」(2018)平井正三・西村理晃編集,誠信書房.
▷ 「自閉症スペクトラムの臨床―大人と子どもへの精神分析的アプローチ」(2016)平井正三・世良洋監訳,岩崎学術出版社.