セミナー案内

2026年度 こども・思春期精神分析セミナー
「精神分析を取巻く現代社会」

 こころの世界は社会と同じように変化しているため、私たち臨床家はその変化とその背景にあるものを捉え続けていく必要があります。この半世紀でも、不登校、ひきこもり、新型鬱病、虐待・DV、発達障害など新たなテーマが社会的問題として浮上してきています。昨今では、当事者性、ジェンダーやエスニシティなども重要なテーマとなっています。

 現代人のメンタリティも時代の流れに沿って刻々と変化し、精神症状にも変化が生じています。例えば、統合失調症の軽症化、ボーダーライン・パーソナリティ障害の減少をはじめ、解離や離人の多様化と複雑化、鬱状態の変質、自閉スペクトラム心性の広がりなどの変化により、私たち臨床家は多様な臨床像の理解と関わり方をめぐり再検討する必要性がでてきました。

 このように社会とこころは連動していますが、今の時代は、以前と比べ、価値観の多様化、新しい秩序の生成、境界線の喪失などの諸要素により、一様には定義し難い状況にあります。それゆえに、現代社会をどのように捉え、そこに生きる人間、とりわけ次に社会を担っていくこども・思春期の者たちのこころの世界を理解し考え続ける姿勢が求められているのではないでしょうか。

 2026年度は、社会的文化的問題と臨床実践との関連を探求している、関係論学派の富樫公一先生、ユング派の河合俊雄先生、ラカン派の立木康介先生をお招きします。本セミナーは、ポスト・クライン派精神分析の視点を中核に置きつつ、それに加え、時代の流れの中で重要となりつつある視点も盛り込み、共に学び合う場を作りたいと考えています。

 今回も、会場とZoomのハイブリッド開催をいたしますので、是非ご参加ください。

主催:こども・思春期精神分析研究会 木部 則雄

◆日 程
2026年5月~2027年3月までの奇数月(全6回)第2日曜日 13時~16時45分 ※第6回のみ第1日曜日
※受付開始は 12 時 50分からとなります。
◆形 式
前半は講義、後半は症例検討
◆会 場
TKP 市ヶ谷カンファレンスセンター3階
◆対 象
こども・思春期を対象とした精神分析的セラピーに関心のある医師、臨床心理士、公認心理師、もしくは現在専門的にそれらを学んでいる大学院生等の学生
◆定 員
会場・Zoom各50名(先着順) 
※「会場参加」を希望された方は、各回ごとに会場参加かZoom参加を選んで頂くことが可能です。
◆参加費
44,000円(消費税を含む)
◆申込期限
2026年2月28日

本セミナーは、臨床心理士資格の更新に必要なポイント申請を行っています。
※セミナーに4回以上参加された参加者に修了証明書を発行いたします。



◆グループ・スーパーヴィジョン ※グループ・スーパーヴィジョンはオンラインでは行いません。
セミナー開催日の午前中(9時30分〜12時)にグループ・スーパーヴィジョン(定員12名)を行っています。
*参加資格:午後に行われる「子ども・思春期精神分析セミナー」の参加者
 事例を提示でき、こどもの精神分析的心理療法の技術を身につけたい方
 ※提示するケースは精神分析的心理療法を実践したケースでなくても構いません。
*スーパーヴァイザー:
 木部則雄(白百合女子大学人間総合学部発達心理学科/こども・思春期メンタルクリニック)
 吉沢伸一(ファミリーメンタルクリニックまつたに)
*場所: こども・思春期メンタルクリニック(セミナー会場近く)
*参加費: 33,000円(消費税を含む)

お申し込みの際に「お問い合わせ」欄に参加希望の旨をご記入ください。
※午前のグループ・スーパーヴィジョンに参加を希望され、午後はZoomでの参加を希望される場合は、間の時間が1時間しかありませんのでご注意ください。

年間テーマ:これからの精神分析 (敬称略)

日程講師司会事例提示
第1回5月10日木部 則雄吉沢 伸一坂本 龍太
第2回7月12日河合 俊雄木部 則雄堀川 聡司
第3回9月13日富樫 公一木部 則雄尹  成秀
第4回11月8日立木 康介木部 則雄諏訪 淳哉
第5回1月10日飛谷  渉木部 則雄佐治 祥先
第6回3月7日平井 正三木部 則雄小林 薫子

 

講 師 (五十音順、敬称略)

河合 俊雄 (京都こころ研究所)
木部 則雄 (白百合女子大学人間総合学部発達心理学科/こども・思春期メンタルクリニック)
立木 康介 (京都大学人文科学研究所)
富樫 公一 (甲南大学/TRISP自己心理学研究所(NY)/栄橋心理相談室)
飛谷  渉 (大阪教育大学保健センター)
平井 正三 (御池心理療法センター/認定NPO法人子どもの心理療法支援会)

事 例 発 表 者 (五十音順、敬称略)

小林 薫子 (星美ホーム)
坂本 龍太 (あざみ野心理オフィス)
佐治 祥先 (こども・思春期メンタルクリニック)
諏訪 淳哉 (しんよこメンタルクリニック)
堀川 聡司 (番町カウンセリングオフィス)
尹  成秀 (帝京大学 文学部心理学科)

参考図書

第1回
▷ 「青年期のデプレッションへの短期精神分析療法―CBTとの比較実証研究と実践マニュアル」(2022)木部則雄監訳,岩崎学術出版社.
▷ 「こころの発達と精神分析-現代藝術・社会を読み解く」(2019)木部則雄著,金剛出版.
▷ 「精神分析/精神科・小児科臨床セミナー総論:精神分析的アセスメントとプロセス」(2019)木部則雄編,福村出版.
▷ 「こどもの精神分析Ⅰ・Ⅱ」(2007・2012)木部則雄著,岩崎学術出版社.

第2回
▷ 「謎とき村上春樹」(2025)河合俊雄著,新潮社.
▷ 「夢とこころの古層」(2023)河合俊雄著,創元社.
▷ 「心理療法家がみた日本のこころ:いま、こころの古層を探る」(2020)河合俊雄著,ミネルヴァ書房.
▷ 「ユング派心理療法」(2013)河合俊雄編著,ミネルヴァ書房.

第3回
▷ 「分断の中の治療者―当事者性と倫理的転回」(2025)富樫公一著,岩崎学術出版社.
▷ 「社会の中の治療者―対人援助の専門性は誰のためにあるのか」(2023)富樫公一著,岩崎学術出版社.
▷ 「当事者としての治療者―差別と支配への恐れと欲望」(2021)富樫公一著,岩崎学術出版社.
▷ 「The Psychoanalytic Zero」(2020) Koichi Togashi,Routledge.

第4回
▷ 「女は不死である: ラカンと女たちの反哲学」(2020)立木康介著,河出書房新社.
▷ 「狂気の愛、狂女への愛、狂気のなかの愛―愛と享楽について精神分析が知っている二、三のことがら」(2016)立木康介著,水声社.
▷ 「露出せよ、と現代文明は言う」(2013)立木康介著,河出書房新社.
▷ 「精神分析と現実界―フロイト/ラカンの根本問題」(2007)立木康介著,人文書院.

第5回
▷ 「アノレクシアの心ー拒食症の白い闇、精神分析の灯火」(2024) マリリン・ロレンス著,北岡征毅訳・飛谷渉解題,金剛出版.
▷ 「エディプス・マターズ―現代クライン派臨床理論から考える心のインフラ」(2021) In,思想8月号 飛谷渉著,岩波書店.
▷ 「精神分析たとえ話: タヴィストック・メモワール」(2016)飛谷渉著,誠信書房.
▷ 「新釈メラニークライン」(2014)ミーラ・リカーマン著,飛谷渉訳,岩崎学術出版社.

第6回
▷ 「セミナー子どもの精神分析的心理療法」(2025)木部則雄・平井正三共編,岩崎学術出版社.
▷ 「精神分析とトラウマ」(2025)平井正三・櫻井鼓共編,金剛出版.
▷ 「意識性の臨床科学としての精神分析―ポスト・クライン派の視座」(2020)平井正三著,金剛出版.
▷ 「主体性の精神分析臨床-変わりゆく時代と社会のための理論と実践にむけて」(刊行予定)平井正三,岩崎学術出版社.