精神科を受診する青年期のデプレッションの人は多く,一般的な精神科診療の枠組みで改善することもあるが,20~30%は改善の兆候もなく,症状は遷延化し,ひきこもりなどのように長期化する。一方,デプレッションは認知行動療法のみが有効であり,精神分析には適応がないかのような偏見が臨床現場に流布されているが,本当だろうか。本書は,精神分析の回数制限によって認知行動療法と精神分析の比較検討を行い,青年期のデプレッションに関して精神分析が有効な介入であることを実証したマニュアルである。28回という回数制限以外には従来の精神分析的心理療法と設定は異ならず,大きく技法の修正を求めるものではない。また本書には青年期の特有の精神分析的介入も記載され,臨床活動にも大きく役立つ。
精神分析は,フロイトと患者たちの試行錯誤の末に成立した臨床実践そのものである。その精神分析がもう一度,患者の治療にどれだけ役立つかを原点に立って問い直すのが本書である。